実はすごい。

machine:X-ADVposted:2018年10月9日

X-ADVは新しいHonda DCTのモデルの中でも異色の存在で非常に興味深い存在であったので、今回試乗の機会を作っていただいた。

はじめて目の前にした車体はやはりスクーターのイメージなのかなと思うものの、直径の先代のINTEGRAからするとガンダムチックになったボディデザイン、カチ上がったかっこいいマフラーとパリダカ風のメーターバイザーのデザインのいい意味でのゴテゴテ感が逆にこれまでのバイクとは?という固定概念を完全に排除してまずは「走るためになりふり構わずに車体を作った感」を醸し出している。

キースイッチは今時のリモコンキーで、所持しているだけでオンにできるタイプ。スイッチを中央にセットすると、そのすぐ下にあるフューエルリッドとシートのオープンのためのボタンをおすことができる。ハンドルロックも左に回すことでロックが可能。リモコンキーの中央ボタンを長押しすることでスイッチ機能のすべてをオフにできる。すべてこのステアリング周りで可能だ。

エンジンをかけるとニュートラルの状態で始動する。右手のスイッチを左に押すことでNが解除され後はスクーター同様にアクセルを回すことで前に進む事ができる。さすがに750ccのトルクは優しく回さないとビュンとでていきそうであるが、1000ccのAfricaTwin程はナーバスになる必要もない。AfricaTwinは足つきのせいもあってタンデムでのUターンなどでこのDCTはクラッチを使えないため正直慎重にアクセルワークで回さないといけないため多少の恐怖を伴うものであったが、X-ADVに於いてはその不安は特に感じることはなかった。

走り出すと流石に調教されたDCTはまるで自分でクラッチを操作しているかのように前に進んでいく。この辺はビッグスクーターのエンジンをまわしてそれを駆動に伝わるのを待ってドヨーンと受け身な感じで前に進むのとは別格で、もはやバイクはすべてDCTでいいんじゃないかと思えたのは以前MN4やAfrica Twinに試乗させていただいたときと同じ印象。ただしステップボードに足を載せて走り出しているとまるでスクーターなので「ん?今私は何に乗っているんだろう?」という不思議な感覚を味わうことになった。

なれるまでは左手のブレーキをクラッチだと勘違いしてしまうので意識していないといけない。ただしこれはすぐに慣れる。この車をもしセカンドバイクとして持つオーナーの方が居ると頭を切り替える必要があるだろうなという印象。

ライディングポジションは高い位置にあるハンドルバーと大きなシートにより自由度は高い。ともかく疲れないポジションで体が完全にたった状態で操作が可能。ニーグリップができない車体なのでどこで腰を支えるべきかを探ってみたがこれは意外とステップボードの前の斜めになっている部分に足を投げ出すように踏ん張ると丁度シートの段差に尻がギュッと押し付けることができ、下半身が固定できるのでニーグリップの代わりになる。それにこのモデルは足は何も仕事をする必要がないのでこの体の固定に集中することができる。

ステップボードについては足を投げ出すポジションと逆にスポーツバイク的に後ろで踏ん張って見たいときもあるのだけど、これは残念ながらそこにステップボードが無い。これは足つきを考慮した設計だろうと思うので致し方ないところ。ステップボードのフラットな部分の前の方には段差が設けてあってボード上で統べるということは特になかったのも好印象。この辺はサードパーティから追加ステップがリリースされているので後付するのも良いかもしれない。ただもちろん足つきには影響するだろう。

このモデルはともかく手元にスイッチが多い。特に左手側には大きなライトのハイロースイッチ。スイッチがローになっている時にロー側に押すとパッシング。その右にハザードスイッチ。そのすぐ下にホーン。更にその下にウインカースイッチ。それぞれ色とデザイン形状を変えて間違わないような配慮が見られてこれも好印象。更に一番上にシフトアップ、一番下にシフトダウンスイッチがある。よくこの数をこのスペースにまとめたなぁという印象。冬場の厚手のグローブだとなんどかウインカースイッチを探してしまうことがあったのと、ありがとうのハザードを鳴らそうとしてホーンを押してしまう事があったがこれもほんとに慣れの問題であろう。更にグリップ側についているのがハンドルバーのヒーターのスイッチ。これがよくできていて5段階の温度とオフを押す度に切り替えることができる。今どの温度に設定されているのかはメーターパネルにも表示されるのだが、押す度にチカチカと設定の数だけ点滅するので、ライダーはメーターに目を落とすことなく目の端のチカチカ具合で設定温度を確認できる。

右手側は中央に大きなDCTのスイッチ。始動して最初はDモードのNになっていて、一度左に押すとNが解除される。その後更に左に押すとSモードとDモードを押す度に切り替えることができる。逆に右に押すとニュートラルに入る。こういう使い方がいいのかどうかはわからないが、私は止まる時にサイドスタンドを出すことでキルスイッチ代わりにエンジンを停止するズボラな操作なので、スタンドを出してもエンジンを掛けたままにしておきたい場合などに右に押してNにしてからスタンドを出すという操作に使う。

右手の下にはセルボタン、上には赤いキルスイッチ。その向こう側にマニュアルとATの切り替えスイッチがある。左手のシフトアップダウンボタンはAT中でも利用できるのだが、すぐにDCTが適正だと思うギヤに戻してしまうので、例えば高速道路でブレーキランプを着けずに減速したい時や、二段落としでフル加速したい時とか、微妙な上りのつづら折れ時にギヤを勝手に変えられたくないときなんかにはMモードに切り替えると便利。MモードなのかATモードなのかはメーターパネルに表示されているのだが、Mモードの時私は自分が意識しておくために左手を田舎ちょきの状態にして、シフトアップダウンボタンに手をかけて置くようにした。今回のツーリングは高速がほとんどだったのでATモードだと常に6速になっているだけなため、Mモードにして走ることが多かった。微妙に前の車が減速してきてアクセルを戻すだけでは間に合わないけどブレーキランプを点灯させたくない(へんなこだわり)のときにカツンとシフトダウンするのに使っていたが、これはいまよくよく考えるとATモードでもできたことでした。

DモードとSモードの違いは想像通り。この車の使いみちとしてはDモードのほうが気を抜けていいと思われるが、スポーツバイクと一緒のツーリングなどではSモードだと楽についていけるだろう。

フットブレーキが無いバイクなので、停車時に両手を離してしまうとバイクが動いてしまう。そのためにスクーターのようにサイドブレーキも装備されている。これって普通のバイクにもあってもいいんじゃないかと思えなくはない。

なかなか良くできているなと感心したのはやはり可動式のスクリーン。ロックを外して少しその部分を引き出した状態にするとダブルウイッシュボーン的なスクリーンのステーを動かして5段階に高さを調整できる。基本いっぱいまで上げると高速ではほとんど体に直接風を受けないレベルになった。座高に寄るところであるが座高が低い人はスクリーンの縁が嫌な高さに来るかもしれないのでその場合は少し下げると良いと思う。一番下まで下げると流石にヘルメットに風をモロに受けてかなりの風切り音でうるさく感じられる。下に下げる意味は視界に余計なものが入らないメリットも有るがやはりカッコイイと言うことに尽きるかと思われる。

あとこのスクリーンであるがよく昔のバイクにはスクリーンにモールドが付いていたり、縁が丸く太くなっているものがあったがこれは今はすっと切り立っていて余計な視界の邪魔にはならない。とは言え角もきれいに丸くなっていてそこで怪我をしそうなこともない。内側から見たスクリーンは両脇の形状的にすこし絞られたところ以外は不快な歪みはまったくないし、ガッチリとしたフレームで固定されているので風圧でブルブル震えることもなかった。ちなみに両手を使う必要があるのと風圧が有るので停車時でなければ調節はできない。

高速においてスクーター的にカバーされている足元はほぼ直接の風が当たっていないので、気温が6度以上であればどこまででも走っていけそうなくらい体温を奪われなかった。更に、途中で雨が降り出したのだがハンドルのブッシュガードは手元をほぼ濡らさないくらい走っている時に雨の影響がなく、レインウエアが無くてもいいのでは?と言うくらいであった。市街地ではそうも行かないと思われるのだが。

何と言ってもトランクはでかい私のシューベルトのシステムメットを飲み込むサイズ。ただし、シートの裏側に設置されているマニュアルと書類、ゴムでとまっている工具を外してヘルメットの中に入れなければならなかった。メットインスペースとしてはギリギリというところだろうか。ちなみにiPad Proの12inchが入りそうだなと思って試すと開けた状態では入るもののシートの裏側の仕切りが大きくそれで蓋を締めることができなかった。

中にはETCと後部にLEDのライトとシガレット電源がある。シガレットにさせるUSBのアダプタを持っておくと便利だろう。

シートを閉じフラットで広大なタンデムシートは通常のバッグ類は積みやすいといえるだろう。グリップ部分には荷掛けフックがそれぞれ1つと肉厚のアルミ部分にはフックがどこにでもかけられる様になっているため自由度は高い。

振り分けバッグに挑戦してみた。問題はカチ上がったマフラーが有るため余り後ろには着けられない。影響がないくらい前に持っていくとなんとか装着ができるレベル。これは専用のパニアなどの発売を待つほうが良いかもしれない。